
炭素繊維工場に勤務し、その製造工程の管理を担当しています。具体的には、アクリル繊維工場で作られた原料(プレカーサー)を受け入れ、焼く温度や伸張などの条件を決め、焼き上がった製品の強度や品質、歩留まりなどを確認する仕事です。また、新しい製品を生産する際には、研究所と協力し、その評価結果をもとに新しい設備を検討。現場の設計や保全と連携しながら、導入していきます。
炭素繊維は、鉄より強くアルミより軽い素材として、ゴルフシャフト等のスポーツ用途から航空機、風力発電のブレードまで、幅広い用途へ利用が進められている新素材です。用途によって求められる強度や弾性が異なるため、それに合わせて原料も変われば、焼くための条件も変わります。求められる強度や弾性を出すためには、品質を見ながら温度や伸張を調整することが重要なのです。
そうした日常的な工程管理と並行して、現状の設備を改善し、品質や歩留まりを上げることも求められています。炭素繊維工場はとにかく規模が大きく、操業には莫大なコストがかかっていますが、逆に考えるとそれは、小さな改善でも大きな効果が得られる、ということです。実際、電子機器に粉塵が入り込むことを防ぐために吹きかける使用エアー量を削減することで、年間数千万円規模のコストダウンに成功したこともあります。以前、先輩社員が「炭素繊維工場は宝の山」と言っているのを耳にしましたが、まさにその通り。検討すべきポイントは山のようにあり、それによって得られる効果は想像もつかないほど。ただし、それを実現するためには、過去の歴史や技術的検討も含めて、自分が担当する工場全体に精通していることが必要です。生産技術者の守備範囲はとても広く、そこが仕事の面白さであり、やりがいだと感じています。
入社3年目に、多発する品質スペックアウト対策のリーダーを任されました。炭素繊維には樹脂を付着させる工程があるのですが、その付着量が安定せず、ロスが出るケースが発生していたのです。とはいえ、検討すべき問題点は、原料、管理、人、設備など様々で、どこから手を付けていいのかわかりません。しかも、当時、私は工場を任されたばかりで、日常の仕事にも慣れていない状況。対策チームには研究所や設備などのメンバーも参加していたのですが、リーダーがそんな状態では方向性も定まらず、話し合いを重ねても具体的な検討は進まず、時間だけが過ぎていきました。
業を煮やした上司は、月に1回の報告会を設定。その案件について発表する場を作ってくれました。他部署の先輩方も、折りに触れてアドバイスを寄せてくださいます。そうこうするうちに、私も日常業務に慣れ、案件に集中して取り組む時間がとれるようになってきました。
まずスペックアウトの背景をよく調べ、問題点を絞り込むことから着手。スペックアウト発生の原因を分析すると、樹脂タンクの濃度が変わることが原因の大半を占めていることがわかってきました。つまり、対策としては管理ルールを徹底することがベストなので、研究所や設備の力を借りずとも、生産技術者である自分一人で検討を進められるはずです。大学で学んだ化学工学の知識を思い返し、自分なりに仮説を立てて、タンク内のマテリアルバランスを式化。タンク内の濃度を安定させるための管理ルールを導き出しました。現場でルールを徹底してから約半年。それまで年に数件起きていたスペックアウトは、今のところ1件も出ていません。学生時代に学んだ化学工学の知識を現場に活かせたことは大きな喜びです。一方で、集中して考える時間を確保し、少しずつでも前に進んでいくことの大切さを学びました。

- 身の回りにあるもの、身近で世の中の役に立つものを作りたいという思いから、素材メーカーへの就職を検討。MMA事業でアジアNo.1(当時)という実績に興味を持ち、三菱レイヨンに入社を決めました。配属は炭素繊維グループでしたが、「身近なところで世の中の役に立つ素材」という意味では、違和感のない仕事に就けたと思っています。











